特別賞 「行政と取り組む職員の健康づくり」 プレミア扇
介護現場において、職員の腰痛予防や健康管理は重要な課題です。プレミア扇では、この課題に対して「個人任せにしない、組織として取組む仕組みづくり」をすべくプロジェクトを発足しました。
足立区と連携して歩みを進めた健康経営への取組は今年で3年目。多職種が手を取り合い、職員の行動変容や腰痛リスクの大幅な軽減、さらには「健康経営優良法人2026」の認定まで至りました。こうした取組が評価され、特別賞を受賞したプロジェクトチームの代表、高木直子さんにインタビューしました。
Q.特別賞の受賞、本当におめでとうございます!足立区の支援を受けて始まった健康経営への取組も3年目の最終章。受賞したお気持ちはいかがですか?
A.この3年間、私たちが積み上げてきた成果が実績として認められてとても嬉しかったです。 介護現場において、職員の健康管理や腰痛予防は諦められがちな永遠の課題です。10年以上のベテラン層ほど「痛いのが当たり前」と諦め、若手は不調を我慢する。そんな個人に依存した対処療法の限界と、潜在的な休職リスクに危機感を持っていました。だからこそ、「個人任せにしない、組織の仕組みづくり」として取組んだこのプロジェクトが、特別賞という形で結実したことは、チーム全員の汗と情熱が報われた思いでした。
Q.職員の健康意識を高めるために「職場の環境を変える(動線へのアプローチ)」を行いましたが、単なる呼びかけで終わらせないために、具体的にどのような戦略を仕掛けたのですか?
A.個人の「やる気」に頼るのではなく、「日常の職場動線の中に、自然と健康に近づく機会を埋め込む」という環境構築型アプローチに徹しました。 1年目は血管年齢の測定会や楽しさに重きを置いたズンバレッスンで意識改革のスタートを切り、2年目は地域も巻き込んだ測定会やボウリング大会で他部署交流と運動機会を増やしていきました。そして3年目には、例えば「階段利用の推進(2階19段登ればー1.9kcal)」といった応援メッセージを日常の動線に掲示し、ウォーキング選手権を独自開催するまでにプログラムを作りこみました。 さらには、足立区の保健師・管理栄養士と連携した「ベジチェック(推定野菜摂取量測定)」により、当初「210g」だった平均野菜摂取量を、3年目には「300g」へと劇的に増加させ、行動変容を数字で証明したのです。
Q.現場の大きな課題である「腰痛対策」として、眠っていた介護機器や最先端テクノロジーをどのように現場へ定着させたのでしょうか。
A.ただ機器を買って置いておくだけでは、絶対に現場は変わりません。「誰に、どの機器が最適か」を多職種で協議する仕組みを作りました。元々、天井走行式のリフト機器も多数導入されていましたし、それに加えて旋回介助の負担軽減のための機器導入、「スライディングシート」によるわずかな力での水平移動、そして床走行タイプの移乗機器を導入して1名での移乗・排泄介助体制を確立するなど、残存機能を生かすためにテクノロジーを積極的に導入しています。これらを形骸化させないため、理学療法士が具体的な機器使用の「動画マニュアル」を自作し、実技指導と定着化を徹底したのです。 さらに個別の経過を「腰痛問診のデータ化」で追跡し、負担の大きい職員には衣類感覚で着脱が簡単な「マッスルスーツ」を貸し出すなど、組織的な取組を徹底しました。
Q.急性腰痛(ぎっくり腰)を発症した職員への現場復帰支援など、具体的な成果が出ていますが、この仕組みが定着したことで、現場の空気や職員同士の関係性にはどんな変化がありましたか?
A.「腰が痛くなったら、何かしら提案してもらえる」という心理的な安心感が生まれたように思います。過去に急性腰痛歴のある職員が発症した際も、理学療法士と看護師が即座に個別介入し、マッスルスーツの着用を指示することで、再発を防ぎながら安全に現場復帰を果たす支援ができました。 かつては「痛くても言えない、我慢する」のが当たり前だった現場が、「困った時はすぐに相談する」文化へと様変わりしました。この結果、職員の腰痛リスクや負担感が劇的に軽減され、お互いの健康状態を気遣い合える非常に風通しの良いチームへと変化しつつあるように思います。
Q.足立区でも講演しましたし、健康経営優良法人2026にも認定されました。素晴らしい成果を出したチームの、これからの目標を教えてください。
A.私たちの本当のゴールは、この取組を「一過性のイベント」で終わらせず、長く継続していくことです。 データ分析が証明している通り、「職員の心身の健康」は、ケアの質向上やヒューマンエラーの減少、そして「いつも同じ馴染みの顔ぶれで最期まで一貫して関われる」という、特養にとって最大の安心材料(利用者メリット)に直結します。 健康経営は、腰痛対策から生産性向上、高齢者虐待防止、人材の定着、社会的信用の獲得まで、すべての福祉課題を解決するための経営土台なのです。今後はこの強い土台を武器に、ブランディングをさらに強化し、職員個人も施設全体も健康で、だからこそ良いケアができる特養を目指していきます。




